かつて、北海道に「アース」という商号の消費者金融がありました。大手消費者金融ではないとはいえ、中にはこのアースでお金を借入していたという人もいることと思います。しかし、アースはすでに廃業しています。
近年、過払い金請求という言葉をとてもよく聞くようになりました。払い過ぎたお金を取り戻せるという、とてもありがたい方法です。でも、廃業している消費者金融から借りていた場合、過払い金請求ってできるのでしょうか?
今回は、アースという消費者金融について、また、過払い金請求について知るとともに、アースに払い過ぎたお金がある人はどうすべきかを考えてみたいと思います。
まずは、「アース」という消費者金融がどんな会社だったのか、どのような経過をたどったのかを見ていきましょう。
消費者金融のアースは、ある会社が度重なる社名変更をしていく中の、ひとつの会社名という位置づけです。
アースの大元の会社は、1961年に東京都杉並区にて「丸産業株式会社」という社名で創業されました。2年後の1963年に北海道札幌市に本社を移転させ、以降、社名を変えつつも北海道で長く営業を続けることになります。
本社移転の翌年の1964年には北海道知事に貸金業としての届け出をし、正式に中小企業や個人に融資業務を行います。
1982年には「マルプラザ丸産業株式会社」に社名を変更し、すぐ翌年に「マルプラザ」に社名変更しています。さらに5年後の1988年に「アース」に社名変更されました。「アース」になるまでに、3回も会社名が変わっていたんですね。
何度も社名変更した末に誕生したアースですが、貸金業として事業を発展させ、1997年には札幌証券取引所に上場します。
大手消費者金融と違って比較的小規模の街金ですので、審査結果が出るまで時間がかかる等の口コミもありましたが、テレビCMなどの広告も打ち、上場後も順調に経営を続けます。
しかし、2006年に成立した貸金業法の改正でグレーゾーン金利が撤廃されることが決まったことなどから、徐々に経営が厳しくなっていきます。2007年には無人契約機や自社ATMのみならず店舗も全て廃止し、アースの歴史は幕を閉じます。
2007年に店舗やATMなどを撤廃したアースは、同時に社名を「さくらパートナー」に変更し、個人への貸し付けは縮小し、投資事業などに事業内容も変更しました。しかし2009年にはまた「RHインシグノ株式会社」という社名に変更されます。
RHインシグノは企業向けの融資や投資事業を中心にしており、子会社に「RHトラベラー」を持ち、旅行関連業務も行っていました。
しかし業績は思わしくなく、「上場時価総額が3億円未満である場合において、9か月以内に3億円以上にならないとき」という札幌証券取引所の上場廃止規定に抵触したとして、2012年には上場廃止となります。
近年、テレビや広告などでさかんに「過払い金請求」という言葉が聞かれます。借金をしたことがない人でも、その言葉を耳にしたことがあるほどです。アースに過払い金請求ができるのかどうか考える前に、まず過払い金請求そのものについて復習しておきましょう。
過払い金とは、その名の通り「払い過ぎたお金」という意味です。消費者金融に対して、本来払わなくてもよい利息を払い過ぎていたというものが「過払い金」です。
なぜ過払い金が生じるのか。それは金利に関する法律が関係しています。利息制限法によって上限金利は以下のように決められています。
借入額 | 金利 |
---|---|
100万円以上 | 15% |
10万円以上100万円未満 | 18% |
10万円未満 | 20% |
しかし、かつて貸金業法が改正される前までは出資法によって29.2%という上限が設けられており、ここまでなら罰則が適用されなかったため、不当に高い金利を取る業者が多かったのです。
現在は出資法の上限金利も20.0%に改正され、安心してキャッシングできるようになり、また、新たな過払い金は発生しなくなりました。
2006年に貸金業法が改正され、段階を踏んで2010年に完全施行されました。それによってグレーゾーン金利が撤廃されましたが、それ以前に借入したことがある人は、過払い金が発生している可能性があります。
借入額や業者などによって差があるため、2010年以前に借入していたら絶対に過払い金があるとは言い切れませんが、一般的に借入期間が長ければ長いほど、過払い金が生じている可能性が高まります。
5年以上の取り引きがある方は、過払い金がある確率が高いので、一度確認してみてはいかがでしょうか。
さて、過払い金があるかどうかを確認するには、借入していた消費者金融に取引履歴を請求することから始まります。過払い金請求を個人でやることももちろん可能ですが、時間も手間もかかるので、専門家にお任せするのが一般的です。
法律事務所や司法書士事務所に依頼すれば、すぐに過払い金があるかどうか確認してくれます。専門家に支払う手数料や報酬を差し引いてもプラスになるほどの過払い金があるなら、そのまま請求までお願いしても良いと思います。
弁護士などにお金を支払うとせっかく戻ってきた過払い金がほとんどなくなってしまうとか、過払い金をすべて自分のものにしたいというケースでは、ご自身で請求をしても良いですね。その方法を紹介したサイトもありますので、参考にしてみてください。
過払い金のことが分かったところで、アースで借入していた人に過払い金があった場合、請求や返還が可能なのでしょうか?
気を付けなければならない点として、過払い金には時効があり、その時期を過ぎると消滅してしまうということが挙げられます。過払い金の時効は、最後の取り引きから10年となっています。
途中で借入や返済などをしていない期間があったとしても、最後に取引をした日から10年後が時効の日です。たとえば、2006年11月1日の返済にて全額完済して、それ以降取引をしていない場合、その日から10年後の2016年11月1日が時効となります。
貸金業法が完全施行されたのが2010年で、それ以降は過払い金は原則として発生しないため、2020年を目途にすべての過払い金は時効で消滅することになります。その前に、ぜひ払い過ぎたお金を取り戻しましょう。
取引していた期間がかなり昔のように思える人でも、一度過払い金があるかどうかだけでも確認してみることをオススメします。
過払い金には時効があることをお話しましたが、これをアースの場合で考えてみましょう。アースが「さくらパートナー」に社名変更をしたのは2007年8月1日です。ここから10年後だと2017年8月1日となり、アースで借入していた人でも社名変更の直前くらいまで取引があれば、まだ時効成立前となります。
会社が廃業していても、その業務をひきついだ業者には過払い金請求に応じる義務があるのですが、アースの後のさくらパートナーも、さらにその後のRHインシグノもすでに無くなっている状況です。
RHインシグノの最後の動きが確認できるのは2012年なので、2022年までは時効の範囲内だと考えることもできますが、アースもRHインシグノもすでに廃業しているという大きな問題があります。会社がないため、過払い金請求に必要な、取引履歴の開示を請求すること自体が難しくなります。
かつて武富士の破産が話題になりましたが、このように破産した消費者金融への過払い金請求は、原則としてできません。残念ですが、あきらめるしかありません。ただし、一定期間内なら請求できることもあります。
しかし、その場合でも存続している消費者金融のように全額を返してもらえることは難しく、多くのケースで1~3割程度となります。
あきらめきれないという方は、一度専門家に相談されることをオススメします。相談だけなら無料というところも多いので、問い合わせてみても損はないと思います。
アースという消費者金融は10年近く前になくなっており、その後のRHインシグノも経営の事実が確認できない状況です。このような業者への過払い金請求は、とても難しいと思われます。
しかし、本来払う必要のなかったお金ですから、どうしても取り戻したいという人がいても何もおかしくありません。そのような方は、ぜひ法律事務所などに相談してみましょう。
お伝えしたように、過払い金には時効が存在しますので、その他の消費者金融に取引があった人も含め、ぜひお早目に対応してくださいね。
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